走れ
桜が舞うグラウンドに俺は立つ。
ゴムの独特な匂いがする。
心臓の鼓動が体中に響く。
緊張しているはずなのに気持ちは高まる。
「走りたくない、でも走りたい」
普通なら混ざらないはずの気持ちが交錯する。
何だか懐かしい気持ちになる。
そうだ、この気持ちだ。
この気持ちを求めて俺は今まで走ってきたんだ。
雨の日も風の日も馬鹿みたいに。全力で。
「位置について」
スタートラインに立って構える。
横には15〜20人のライバル達。
誰がどう感じているか、何を考えているかなんて分からない。
でも、全員が負けたくないと思っているのは確かだ。
だからといって俺が下がってどうする。
どうせなら、一番前を奪ってやる。
抜かれても食い下がってやる。
今までの努力を思い出せ。
思い出せ。
今の俺なら出来るはずだ…
ピストルが鳴った。
瞬時にたくさんの足音が轟く。
走れ!
また、熱い日々が戻ってきた。