床屋のおじさん

私は10年以上行きつけの床屋に通っています。
幼稚園の頃から通っていて、今も変わらず通っています。
(一度だけ骨折した時に別の美容院に行きましたが…)


そこの床屋のおじさんとおばさんとはそのときからの付き合いで、色々なことを話してきました。
学校のことだったり、習い事の水泳や剣道の話だったり、部活動の話だったり…。
「何度か他の床屋で早く済ませてきたら?」などと言われましたが、今もそのアットホームな雰囲気の中で漫画を読んだり、話をしながら髪を切ってもらっていました。


そんな日が続き、今年の初め…。


床屋のおじさんの様子がおかしくなりました。
明らかに右手がほぼ動いていませんでした。
本人は「まだ臨床実験中の薬があってそれが間に合えば飲んで治せるらしいんだけど…」などと話していました。
そんな中でも、おじさんは何とかおばさんの力になろうとしていました。


私は見ていられなかったです…。
どうにかしてあげたかったです…早く治って欲しかった…。
多分、麻痺は残ってしまう…もしかしたら治らないかも…などと思っていました。
でも、どうにか笑顔のおじさんが見たかったのです。



昨日の祖母から聞いた話は信じられませんでした。
そんなことは無いと思いながら、今日床屋に行きました。




おじさんはいませんでした。




どう見てもおばさんは気さくに話しかけてくれましたが様子がいつもと違いました。
床屋に行って少しして、おばさん本人からおじさんが亡くなったとの話を聞きました。


個人的には「やっぱりそうだったのか…」と感じました。
いつもの場所にいつものおじさんがいない。


何かが抜け落ちたような感じ。
何かが足りない感じに少し胸が痛みました。


おじさんは難病にかかっていたっらしく、治る術は無く、最期は内臓に病気が転移したとの話を聞きました。
安らかに逝くことができたとの話を聞き、少し私はホッとしました。


おじさんにしてあげられたことはとても少ないけど、出来るだけこの髪型のままで、出来る限り手を入れずに、大切にしたいと思いました。






ありがとうおじさん。
またいつか、そちらに行ったら話の続きをしましょう。